腹痛が告げた娘のSOS

Uncategorized

腹痛が告げた娘のSOS

あの日のことは、一生忘れることができません。

冷え込みが厳しくなる12月のある朝、
小学校に行く準備をしていた娘が、
突然ベッドの上で丸くなり「おなかが痛い」と訴えました。

その小さな声を聞いた瞬間、私の頭の中に警鐘が鳴り響きました。
これは単なる体調不良ではない、
心と体が発する「限界のサイン」だと直感したのです。
これ以上、娘に無理をさせてはいけないという強い思いが、全てを上回りました。

私はすぐに学校に連絡を入れました。
平静を装いながらも、絞り出すように
「精神的なものから腹痛を訴えるようになりました。
娘の心身を守るため、しばらくお休みをいただきます」と伝えました。

その頃の自分の記憶は、まるで濃霧の中のようです。
涙は出なかったと思いますが、
ただ、腹痛でうずくまり苦しむ娘を見ていることしかできない無力感に、
私の心は張り裂けそうでした。

学校を休み始めても、娘の体調はすぐには回復しませんでした。
さらに、デイサービスにも行けなくなり、
私から離れることを極度に恐れるようになったのです。

不安に駆られ、訪れた児童精神科で下された診断は「母子分離不安」。
薬も処方されました。
しかし、その小さな錠剤を娘に飲ませる勇気が、どうしても出ませんでした。
薬が娘の根本的な苦しみを軽くしてくれるのか、副作用はないか、
私には判断できなかったからです。

母としての決意と、どうしようもない無力感が入り混じる中で、
私が娘に対して発した言葉は、ただ一つ。
しかし、それは私にとって最大の覚悟でした。

「もう学校には行かなくていいんだよ。心配しなくていいからね」

その瞬間、張り詰めていた娘の表情がわずかに緩み、
「本当にもう行かなくていいの?」と娘は言いました。
その表情は、彼女がどれだけ頑張り、
どれほど追い詰められていたかを物語っていたのです。

母子でこの厳しい現実に向き合い始めた、
静かで、しかし深い決意を固めた冬の日でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました