夫の診察が終わり、夫が診察室を退室したあと。
今度は、私だけが医師と話をする時間がありました。
夫本人から見た自分の状態と、家族から見た夫の状態は、必ずしも同じではありません。
この数週間、夫のそばで過ごしてきた私には、どうしても先生に伝えておきたいことがありました。
突然泣き出すこと。
過去の出来事を思い出しては、強い怒りを見せること。
感情が大きく揺れ動き、ほんの少し前とはまったく違う様子になること。
そして、日常生活を送ることが難しいほど、混乱しているように見えたこと。
他者から見た夫の状態を、できる限り細かく先生に伝えました。
すると先生は、私の話を聞いてこう言いました。
「分かりました。前の病院から聞いていますから、安心してくださいね」
その言葉を聞いて、私は少し驚きました。
そして同時に、ほっとしました。
実は夫が入院する前、私は前の病院の主治医に、夫の状態を細かくまとめた用紙を渡していました。
夫にどのような症状が出ていたのか。
自宅でどのような様子だったのか。
家族から見て、どのような変化があったのか。
本人だけでは伝えきれないと思ったことを、できる限り書き出していました。
あのとき渡した用紙が、きちんと入院先の病院にも引き継がれていたようでした。
夫が新しい病院へ入院することになり、また一から夫の状態を説明しなければならないのではないか。
私はそう思っていました。
けれど、前の病院から入院先の病院へ、必要な情報が共有されていました。
夫がこれまでどのような状態だったのか。
家族がどのようなことに困っていたのか。
そして、なぜ入院が必要だと考えられるようになったのか。
すべてを私一人が説明しなくても、医師の間で情報が引き継がれていたことが分かりました。
「ちゃんと伝わっていたんだ」
そう思うと、本当に安心しました。
夫はこれまで、なかなか自分自身の状態を客観的に説明できるようには見えませんでした。
だからこそ、本人の話だけで診察が進んでしまったらどうしよう。
本当はもっと深刻な状態なのに、十分に伝わらなかったらどうしよう。
そんな不安が、私にはずっとありました。
けれど、前の病院で伝えた情報も、家族である私から見た夫の状態も、きちんと入院先の医師に届いていました。
このとき初めて、
「夫のことを、安心して医療の方たちに任せられるかもしれない」
そう思うことができました。


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