病院へ向かう車の中で、夫は何度も泣いた
病院へ向かう車の中で、夫は何度も不安を口にしました。
「どれくらい入院するんだろう」
「入院したら、どんな生活になるんだろう」
初めての入院。
しかも、本人が十分に心の準備をする時間もないまま、その日のうちに入院することになったのです。
不安になるのも当然だったと思います。
そして、夫が何より気にしていたのは、家に残る子どもたちのことでした。
「自分がいなくなったら、子どもたちはどうなるんだろう」
何度もそう話していました。
突然のことだったため、子どもたちには何も伝えられないまま家を出てきました。
「行ってくるね」
「しばらく帰ってこないかもしれないよ」
そんな言葉をかけることもできませんでした。
きちんと「いってらっしゃい」「いってきます」と言うことすらできないまま、夫は家を出ることになったのです。
そのことを思うと、夫もつらかったのだと思います。
「どうしてこんなことになってしまったんだろう」
そう言って、夫は何度も泣きました。
その日の午前中まで普通に家にいたのに。
ほんの数時間後には、入院するために病院へ向かっている。
あまりにも急な出来事でした。
そんな中、道中で義妹からも電話がありました。
「今すぐ駆けつけたい」
「入院に同席してもいい?」
そんな内容でした。
私は電話を受けながら、夫にもそのことを伝えました。
すると、夫はさらに激しく泣き出しました。
義妹には、こんな自分の情けない姿を見せたくない。
夫はそう思ったのだと思います。
そして、妹の立ち会いは遠慮することにしました。
義母は何度も何度も義妹に話をし、説得していました。
けれど、なかなか納得してもらえません。
最終的には、しぶしぶ受け入れてくれたようでした。
そんなやり取りをしている間にも、夫の感情は大きく揺れ動いていました。
さっきまで子どもたちのことを心配して泣いていたかと思えば、突然、過去の出来事を思い出して怒り始める。
「○○のことが許せない」
「一生許さない!」
突然、強い敵意を向けることもありました。
そしてしばらくすると、また不安そうになったり、泣き出したりする。
感情が、目まぐるしく変わっていきました。
一時間ほどの道のりでしたが、その間も夫の様子は何度も変化しました。
何がきっかけで感情が大きく変わるのか、私にも分かりませんでした。
ただ隣にいる夫の様子を注意深く見ながら、私は運転を続けました。
運転をしながら、夫の言葉を聞き、様子を確認する。
何かあればすぐに対応できるようにしておく。
その一時間は、私にとっても決して気を抜くことのできない時間でした。
これから夫が入院する病院へ向かっている。
けれど、まだ何が起こるか分からない。
そんな緊張感を抱えたまま、私たちは病院へ向かいました。
そして、約一時間後。
ようやく、入院先の病院が見えてきました。


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