診察の日を迎える前に、私は病院のケースワーカーさんへ電話を入れていました。
夫の様子が、明らかに普通ではないこと。
自宅で過ごすことに限界を感じていること。
そして、私自身も訪問看護師さんも、もう入院が必要な状態ではないかと考えていること。
夫本人も、入院には抵抗を示していたものの、少しずつ「入院したほうがいいのかもしれない」と思い始めており、今は入院に同意していること。
できる限り、今の状況を詳しく伝えました。
私の話を聞いたケースワーカーさんは、医師にも確認を入れてくださいました。
そして、
「まずは診察を受けてから決めましょう」
と話してくださいました。
その言葉を聞き、私は診察の日を待つことになりました。
けれど、その二週間が、とても長かったことを覚えています。
夫の状態は不安定なまま。
家族だけで支え続けることにも限界を感じていました。
「早く診察の日になってほしい」
そう思う一方で、次の診察まで何事もなく過ごせるのだろうかという不安もありました。
そして、ようやく診察の日がやってきました。
今回も、私が夫に同行しました。
前回の診察では、夫本人がまず一人で診察室に入り、その後、私が状態を説明するために同席しました。
けれど今回は、あまりにも症状が強かったため、最初から診察室への同席を許可していただきました。
診察室に入り、先生は夫の話を聞いたあと、穏やかにこう話しました。
「○○さん。今の状態では、ご本人もつらいですよね。
ここまで頑張りましたね。
今は何かを頑張るときではありません。
入院して、心を休めるときです。
私は入院に同意します。
○○さんも、入院に同意していただけますか?」
夫は少し考えたあと、先生に尋ねました。
「先生は、私が入院したほうがいいと思いますか」
先生は、はっきりと答えました。
「そう思います。
周りの刺激からいったん距離を置いて、ゆっくりと休める環境が必要です」
それまで、私たち家族や訪問看護師さんから何度も入院を勧められても、なかなか納得できなかった夫。
けれど、主治医の言葉は夫にも届いたようでした。
そして、夫は入院に同意しました。
私は、もう一つ心配していたことがありました。
精神科病院への入院と聞くと、どうしても「閉鎖病棟」や「身体拘束」という言葉が頭に浮かんでしまっていたからです。
そこで、先生に率直に尋ねました。
「閉鎖病棟だったり、身体拘束があったりするのでしょうか? そこが心配です」
すると先生は、こう説明してくださいました。
「今の時代は、入り口だけがロックされていて、あとは普通の入院病棟と同じような雰囲気の病院も多いですよ。
私がこれから手配しようと思っている病院も、そういうところです」
さらに、身体拘束についても説明してくださいました。
「身体拘束に関しては、基本的には行われていません。
他害の可能性がない以上、○○さんを身体拘束することはないと考えて大丈夫ですよ」
その言葉を聞き、私は少し安心しました。
精神科への入院について、何も分からないまま不安ばかりが大きくなっていたからです。
先生は続けて、
「これから数日間の待機期間があると思いますが、ケースワーカーから電話します。
私が良いと思う病院を順に当たっていくので、安心してくださいね」
と話してくださいました。
こうして、ようやく夫の入院に向けて動き出すことになりました。
初診の日を迎えるまでにも長い時間がかかりました。
薬を処方されてからも、効果を待ちながら不安定な状態を見守り続けました。
そして、ようやく主治医から「入院したほうがいい」という明確な言葉をもらうことができました。
そのときの私は、夫が入院することへの不安よりも、
「ようやく専門家の手に委ねることができるかもしれない」
という安堵の気持ちのほうが大きかったことを覚えています。
ここまで、本当に長かった。
けれど、このときはまだ、入院先が決まったわけではありませんでした。
次は、夫を受け入れてくれる病院を探すことになります。


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