前回の記事で、偶然にも精神科の初診枠がひとつ空いたことを書きました。
当時の私たちにとって、それは本当に大きな出来事でした。
夫の状態は日に日に悪くなっている。
けれど、どこの病院もすぐには診てもらえない。
そんな状況の中で、ようやく見つかった初診の枠でした。
まさに、藁にも縋るような思いでした。
「これでようやく病院につながれる」
「ここで診てもらえば、何か変わるかもしれない」
そんな期待を抱きながら、私たちは診察の日を待ちました。
夫は一貫して、
「あなたと同じ病院がいい」
と言っていました。
私が以前から通っていた病院だったこともあり、夫自身もその病院なら受診してみようと思えたのだと思います。
夫がようやく受診する気持ちになってくれたこと。
そして、そんなタイミングで偶然にも初診の枠が空いたこと。
私は、本当に運が良かったのだと思っていました。
あれだけ病院を探しても見つからなかったのに、たまたま一枠だけ空いた。
「これは何とかなるかもしれない」
そう思っていました。
ところが――。
診察を翌日に控えた日のことでした。
突然、病院から電話がかかってきました。
嫌な予感がしました。
電話に出ると、病院の方から告げられたのは、思いもよらない言葉でした。
「先生が急病のため、初診の日の診察が不可能となってしまいました」
ショックで言葉を失ってしまいました。
明日になれば、やっと診てもらえる。
そう思っていたのです。
それまで何とか家族で夫を支えながら、明日の診察だけを目指していました。
それなのに、その「明日」が突然なくなってしまった。
電話を切ったあと、目の前が真っ暗になるような気持ちになりました。
「また探さなければいけないの?」
「今のこの状態で、また何週間も、何か月も待つの?」
頭の中を、そんな言葉がぐるぐると回りました。
夫の状態は、待っていれば自然に良くなるようなものではありませんでした。
むしろ、日に日に症状は強くなっていました。
それでも私たちは、ようやく見つかった診察の日を支えにしていたのです。
その支えが、診察の前日になって突然なくなりました。
もちろん、先生が急病になったことを責めることはできません。
誰にとっても予期せぬ出来事だったのだと思います。
病院の方も、できる限りの対応をしてくださっていたのだと思います。
それでも――。
そのときの私には、そんなことを冷静に考える余裕はありませんでした。
「どうしたらいいの?」
ただ、それだけでした。
あのときの私は、本当に途方に暮れていました。



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