閉鎖病棟にいる夫からの電話

夫が入院して三日目の朝。

私は義母を駅まで送りに行きました。

義母は、どこかほっとしたような表情に見えました。

そして、大きく手を振ると、人ごみの中へ消えていきました。

私自身も、義母と離れられることに、かすかな安心感を感じていました。

それくらい、部屋に引きこもる義母の姿を見ることは、私にとって苦痛だったのです。

こうしてここから、子どもたち3人との完全なるワンオペ生活が始まりました。


夫が入院して二日目の日中、夫から電話がありました。

夫は、オランザピンという薬を飲んでいることを話してくれました。

薬の影響なのか、ご飯を食べても足りないと感じること。

けれど、自由に買い食いをすることもできないこと。

夫には、まだ外出許可が下りていませんでした。

院内には、自由に買い物ができる売店もありません。

ましてや、夫がいたのは入口が閉鎖されている病棟でした。

夫は、入院した人がまず入る閉鎖病棟の大部屋にいました。

自由は、ほとんどきかない生活だったようです。

食事についても、年齢や身長、体重などから計算されたカロリーの食事が提供されているようでした。

夫から入院生活の話を聞きながら、私は内心、戦々恐々としていました。

「帰りたい」

そう言われるのではないかと思っていたのです。

それくらい、夫を看病する生活は過酷でした。

またあの生活に戻ることになるのではないか。

そんな不安がありました。

けれど、夫は電話口でこう言いました。

「入院生活は辛い。でも、早く退院できるように頑張る」

その言葉を聞いたとき、少し意外に思いました。

入院生活が辛いことは間違いない。

それでも夫は、「帰りたい」と訴えるのではなく、自分が退院するために頑張ると言ったのです。

私は電話を切ったあと、少しだけ肩の力が抜けたことを覚えています。

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