夫が病棟へ向かったあと。
廊下には、義母と私、そして数名の看護師さんが残されました。
義母はその場で、夫のこれまでの生活や家族について、いろいろと聞き取りを受けていました。
一方で私は、別の部屋へ呼ばれました。
そこでは、入院に関するいくつかの書類に署名することになりました。
覚えている限りでは、
・預かり金の管理を病院へ委託することに関する承諾書
・バスタオルや病衣を、1泊500円でレンタルするための契約書
・身元引受人に関する書類
などでした。
身元引受人に関する書類には、夫が入院中に何かトラブルを起こした場合についての内容も含まれていました。
もし夫が暴れたり、物を壊したりした場合には、身元引受人が対応する。
そんな趣旨の内容だったと記憶しています。
一つひとつ説明を受けながら、書類にサインをしていきました。
けれど、このときの私は、とにかく時間が気になっていました。
病院に到着したのは14時30分。
夫が病棟へ入り、書類の手続きをしている頃には、すでに15時30分を過ぎていました。
ここから自宅までは、車で約50分。
子どもたちが帰宅する時間が迫っていました。
「早く帰らなければ」
頭の中では、そればかり考えていました。
夫が突然入院することになり、慌ただしく荷物を準備して病院へ向かった。
そして夫を病棟へ見送った直後には、今度は子どもたちのもとへ帰らなければならない。
気持ちを整理する時間など、ありませんでした。
事務員さんにも事情を説明し、
「子どもたちが帰ってくる時間が迫っていて……」
とお伝えしました。
すると、できるだけ急いで説明を進めてくださいました。
私も一つひとつの説明を足早に聞き、必要な書類に署名していきました。
すべての手続きが終わったあと。
私は義母と一緒に病院を後にしました。
車に乗り込むとき、そこには夫が慌てて準備した大量の荷物がありました。
結局、そのほとんどを持ち帰ることになりました。
十分な別れの言葉を交わすこともないまま、夫は病棟へ行ってしまいました。
けれど、私はその余韻に浸る間もなく、今度は子どもたちの待つ家へ急いで帰らなければなりませんでした。
夫が入院したという大きな出来事が起きても、家に帰れば、いつものように子どもたちの生活が待っていました。


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