ひととおり泣いたり、心の中でパニックを起こしたりしたあと。
私は、平静を装いました。
子どもたちに影響を与えてはいけないと思ったからです。
……いや。
私は、あのとき泣いていたのでしょうか。
胸が絞られるような苦しい感覚は覚えています。
けれど、泣いていたのかどうかは、今となっては記憶があいまいです。
どこかで、まだ信じられなかったのだと思います。
人違いなのではないか。
何かの間違いなのではないか。
そんな思いもありました。
きっと赤い目をしていたのだと思います。
それでも私は、いつも通り子どもたちの世話をしました。
その日は、友人と一緒にコンサートを見に行く予定もありました。
友人から無償で譲ってもらったチケットでした。
今思えば、そんな緊急事態なのだから、チケットはそのまま破棄してしまえばよかったのだと思います。
でも、そのときの私は、
「せっかくもらったチケットを無駄にしたくない」
という気持ちがありました。
今考えると、自分でも不思議です。
兄が亡くなったと知らされたその日に、なぜ私はコンサートのチケットのことを気にしていたのだろう。
それでも、近場に住んでいる友人たちに一通り連絡をしました。
すると、そのうちの一人が、
「チケットを引き取りたい」
と連絡をくれました。
私は、その友人にチケットを譲ることにしました。
街中まで、どうやって行ったのか。
今となっては、そこもよく覚えていません。
ただ、友人にチケットを渡すことができました。
そして、時間は過ぎていきました。
兄から電話を受けてから、どれくらい経ったのでしょう。
約束していた、警察署へ行く時間が近づいてきました。
私は、兄と対面するために、警察署へ向かうことになりました。


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