私は夫に運転してもらい、警察署へ向かいました。
警察署に着くと、私だけ降ろしてもらい、夫と子どもたちは家へ帰っていきました。
外は吹雪いていました。
警察署には、長兄、亡くなったと知らされた兄Sの元妻と子どもたち、両親、そして私がいました。
兄Sは、警察署のすぐ横にある小さな建物に安置されているようでした。
「こちらにご案内します」
そう言われ、その建物へ案内されました。
父と長兄、元妻、子どもたちが先に中へ入っていきました。
建物の中は、静けさに包まれていました。
誰かが静かに泣いていたと思います。
私は、極度に緊張していました。
母だけは、兄と対面することをひどく恐れていて、なかなか建物の中へ入ることができませんでした。
入りたくない!母は泣いて、必死に事実を否定しているように見えました。
私は母の肩を支え、背中を押しながら、一緒に中へ入っていきました。
そして、そこに兄がいました。
間違いなく、兄でした。
ビニールのようなものをかけられて、そこに横たわっていました。
顔には、昨日ひげを剃ったときに肌を傷つけてしまったのでしょうか。
小さな傷がありました。
まるで眠っているようでした。
私は、あまりに驚いてしまって、涙が出ませんでした。
「本当に兄なんだ……」
その事実に、ただただ衝撃を受けていたのだと思います。
電話では、どこかで「人違いなのではないか」と思っていました。
何かの間違いなのではないか。
そんな気持ちが、ずっと残っていました。
でも、目の前にいるのは、紛れもなく兄でした。
それでも、私にはどうしても「死んでいる」ということが実感できませんでした。
「すみません……本当に、死んでいるのでしょうか……?」
私は警察官に尋ねました。
すると、
「まだお引渡しできないので、触ることはできません」
と答えられました。
私には、本当に生き生きとした兄が、冷たい部屋でただ眠っているようにしか見えませんでした。
目の前に兄がいる。
でも、もう話すことはできない。
そのことが、まだ現実のこととして理解できませんでした。


コメント