歯医者の話を少し挟みましたが、もう少し兄のパートナーと、兄のことを書こうと思います。
兄のパートナーから、兄が亡くなる直前のことも聞きました。
これは、あくまで彼女から聞いた話です。
彼女は兄に、
「もう勝手にして!」
と強い口調で言ったあと、兄が家を出て行ってしまったことを後悔し、すぐに追いかけたそうです。
兄は車のガレージにいました。
そして、外から開けられないように鍵をかけていたそうです。
彼女は、ただならぬものを感じたのでしょう。
友人に相談し、その友人の助言もあって、救急車を呼んだそうです。
現場には救急車や消防車も駆けつけ、たくさんの人が集まり、騒然とした様子だったといいます。
それでも彼女は、その時点では、まさか兄が自ら命を絶とうとしているとは思っていなかったそうです。
「こんな騒ぎだったんだからね!」
あとから兄に見せようと思い、現場の様子を動画に撮っていたそうです。
消防の方がガレージを開け、兄が車の中でぐったりしているところを発見したと聞きました。
その後、救出され、救急車で病院へ運ばれたそうです。
救急車の中では、救命措置が行われたようです。
そして、救急車が大きな病院に到着すると、兄だけが中へ運ばれていきました。
彼女は外で待っていたそうです。
そして、たった5分ほどしか経っていないのに呼ばれた。
彼女は、あまりにも早く呼ばれたことに驚いたそうです。
そこで目にしたのは、横たわる兄の姿でした。
そして、医師から、
「死んでいますね」
とだけ言われたそうです。
彼女は、その言葉にひどく傷つき、憤慨していました。
「お悔やみ申し上げます」
「ご臨終です」
医師として、ほかにも伝え方はあったのではないか。
彼女にとって、その「死んでいますね」という言葉は、あまりにも突然で、冷たく感じられたのだと思います。
そして、病院に到着してから、あまりにも短い時間でそう告げられたことにも、不信感を抱いていたようです。
きちんと救命措置は行われたのだろうか。
病院に到着した時点で、すでに手の施しようがなかったのだろうか。
私は、その場にいたわけではありません。
救急車の中や病院で実際にどのような処置が行われたのかも、私には分かりません。
だから、そのことについて私が何かを断定することはできません。
ただ、彼女がその場でどれほど混乱し、傷ついたのか。
それを思うと、今でも胸が痛みます。
彼女は、兄の亡骸を抱きしめたとき、
まだ体がやわらかく、温かかった。
とても死んでいるようには思えなかった。
そう話していました。
前日まで一緒に暮らしていた人が、突然目の前からいなくなってしまう。
それだけでも受け止められない出来事なのに、その最期の瞬間を目の前で経験することになってしまった彼女。
私は、彼女にこんなにつらい経験をさせてしまったことを、今でも申し訳なく思っています。
あのとき、兄が何を思っていたのか。
何を苦しみ、何を考えていたのか。
もう本人に聞くことはできません。
こうして、私の大切な兄は旅立ってしまいました。


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