両親の失言は、まだ続きます。
以前、兄は介護の仕事をしていたと書きました。
兄は大学を卒業してから、転職をすることはあっても、ずっと介護に携わる仕事をしていました。
私は、きっと兄は介護の仕事に、やりがいや誇りを持っていたのだと思っています。
でも、両親は違いました。
両親が気にしていたのは、世間体や仕事の大変さ。
そして、それだけ大変な仕事なのに、給与がそれほど高くないことでした。
私は両親に、
「兄ちゃんが元気で働いているんだから、それでいいじゃない」
と言ったことがあります。
でも、兄が二度目の転職をしたとき、両親は兄の仕事について苦言を呈しました。
「介護職なんて、臭い、汚い、辛い、安いの世界でしょう」
「奥さんのように、○○のような会社にしたらいいんじゃないの?」
そんなことを言ったそうです。
兄は、自分で転職先を探し、自分の力で次の仕事を決めたのだと思います。
それなのに、両親はそのことを認めてくれなかった。
兄は、とてもショックを受けたのだと思います。
そして、兄は両親に対して、
「お前らだって、いつか介護されるんだからな!」
「家、燃やしてやるからな!」
そんな言葉を言ったと、後から母から聞きました。
かなり過激な言葉です。
でも、普段の兄は、調子よく冗談を言ったり、ふざけたりするところもありました。
だから私は、兄なりの怒りや悔しさをぶつけた言葉だったのではないかと思っています。
ただ、母はその言葉を、そのまま受け取りました。
それから母は、
「息子に家を燃やされるかもしれない」
と怯えるようになり、兄を遠ざけるようになりました。
そして兄も、自分の頑張りや仕事を認めてくれない実家を、遠ざけるようになったのです。
両親は、誕生日など、さまざまな機会に兄へメールを送っていました。
でも、兄から返事が返ってくることはありませんでした。
そんな状態が、何年も続きました。
そして数年が経った頃、ようやく父は、このことの重大さに気づいたのだと思います。
父は、自分の失言について謝る文章を書き、兄に送りました。
でも兄は、その謝罪文を水につけ、破って捨てたそうです。
父は、それを聞いて憤慨しました。
「せっかく謝ったのに」という気持ちだったのかもしれません。
でも、兄にとっては、長い間積み重なっていたものがあったのでしょう。
こうして、兄と両親の関係は修復されないまま、6年、7年と続く絶縁状態になっていきました。
今振り返ると、あの日の失言だけが問題だったのではないと思います。
お互いの言葉をどう受け止めるのか。
相手が何を大切にしているのか。
それを理解しようとすることができなかった。
小さなすれ違いが積み重なって、いつの間にか、取り返すことが難しいほどの距離になってしまったのだと思います。


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