何が兄を苦しめたのか。
私は、それは家族の無理解だったのではないかと思っています。
もちろん、それが兄の死の直接の原因になったのかどうかは分かりません。
でも、家族との関係が兄を苦しめていたことは、確かだったのだと思います。
兄は、家族思いだったと思います。
兄が結婚し、子どもが生まれました。
最初に生まれたのは、男の子でした。
そのとき母が、
「次は女の子がいいね」
と、何気なく言ったそうです。
母にとっては、深い意味のない言葉だったのかもしれません。
兄は独身の頃、実家に帰ることがそれほど多かったわけではありませんでした。
でも、奥さんができて、子どもが生まれてからは、度々実家に帰ってきていました。
両親に孫の顔を見せるためだったのだと思います。
そして、兄にもうひとり子どもが生まれることになりました。
出産するまで、性別は家族には知らせていなかったそうです。
そして、無事に赤ちゃんが生まれました。
また男の子でした。
そのとき母は、
「また男かい!!」
と言ったそうです。
「おめでとう」よりも先に出た言葉だったと聞きました。
兄は、そのことにとても憤慨していたそうです。
私はその話を聞いたとき、母に尋ねました。
「どうしてそんなこと言ったの?」
無事に赤ちゃんが生まれた。
それだけで、とても喜ばしいことだったはずです。
それなのに、どうして最初にそんな言葉が出てしまったのだろう。
私には理解できませんでした。
すると母は、
「だってそう思ったから仕方ないじゃない!」
そう言いました。
私は、その言葉を聞いて、何とも言えない気持ちになりました。
母にとっては、本当に悪気のない一言だったのかもしれません。
でも、言われた兄にとっては、決して小さなことではなかったのだと思います。
自分の子どもが無事に生まれたことを、一緒に喜んでほしかったのではないでしょうか。
自分が大切にしている家族のことを、同じように大切にしてほしかったのではないでしょうか。
今となっては、兄に直接聞くことはできません。
だから、本当のところは分かりません。
ただ、こうした小さな出来事が積み重なっていったことは、家族との関係に悩んでいた兄にとって、決して小さなことではなかったのだと思います。


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