戻ってきた看護師。その後ろには男性職員が二人いた

「少し確認してきますので、お待ちください」

そう言って、看護師さんはいったん部屋を出ていきました。

私は、持ち込みの可否について上司に確認しに行ったのだと思っていました。

けれど、しばらくして戻ってきた看護師さんの後ろには、男性職員が二人いました。

私は驚きました。

あのときの夫の様子を見て、何かあったときのために呼ばれたのだろうか。

私にはそう見えました。

夫は看護師さんに対して強い口調で詰め寄っていました。

もしさらに興奮し、制止がきかなくなった場合に備えて、男性職員が必要だと判断されたのかもしれません。

もちろん、本当の理由は私には分かりません。

ただ、男性職員二人が入ってきた瞬間、夫の態度は明らかに変わりました。

夫自身も、何かを察したのかもしれません。

私はその光景を見て、複雑な気持ちになりました。

女性が相手だと強い態度に出るのに、男性が出てくると急に態度が変わる。

世の中には、残念ながらそういう場面があります。

妻が何度言っても聞く耳を持たなかったのに、夫が同じことを言った途端、急に態度を変える。

私自身、これまでの人生で何度も似たような経験をしてきました。

だからこそ、あの場面でも、男性職員が現れた途端に夫がおとなしくなったことが、とても印象に残っています。

その後、改めて荷物の確認が行われました。

そして、私たちが持ってきた荷物の多くは持ち込むことができないことが分かりました。

まず、夫が持ってきたパソコンと携帯電話。

これらは医師の判断により、持ち込み不可となりました。

理由は、外部からの刺激が強すぎるためとのことでした。

入院直後の夫には、外部との接触を減らし、落ち着いた環境で過ごすことが必要だと判断されたのだと思います。

次に、ハンガー。

こちらは自傷防止の観点と、病院側にすでに用意があるという理由から、持ち込み不可となりました。

現金や財布も持ち込むことができませんでした。

これは、患者同士のトラブル防止などのためだと説明を受けました。

代わりに、必要なお金は「預かり金」として受付に預ける形になりました。

必要があれば、そこから出金してもらう仕組みです。

預かり金には管理料もかかり、確か一日250円程度だったと記憶しています。

そして、携帯電話を持ち込めなくなったことで、夫の外部との連絡手段も限られることになりました。

必要があれば、この預かり金からテレフォンカードを購入し、院内の公衆電話を使って電話をする。

そんな仕組みでした。

けれど、夫は私の電話番号以外、ほとんど覚えていません。

突然決まった入院だったため、誰かの電話番号をメモしてくる時間もありませんでした。

「電話をかけたい相手がいても、番号が分からなければ電話できない」

そんな状況になってしまいました。

さらに、洋服についても制限がありました。

病衣が支給されるため、持参した洋服のほとんどは持ち帰ることになりました。

病衣とバスタオルなどはセットで、1泊500円程度のレンタルだったと記憶しています。

そして、飲食物も持ち込み不可でした。

理由について詳しく説明を受けた記憶はありませんが、病院側で食事を管理するためだったのかもしれません。

結局、夫が持ち込むことができたものは、ごくわずかでした。

・マンガ本
・上靴
・少しの洋服

記憶に残っているのは、それくらいです。

入院が決まったその日。

私たちは慌てて荷造りをしました。

「これも必要かもしれない」

「あれも持っていったほうがいいかもしれない」

そう考えながら、大量の荷物を車に積み込みました。

そして、片道50分かけて病院へ向かいました。

けれど、実際に入院手続きを終えると、その大半は持ち込むことができませんでした。

大荷物を抱えて病院に来たのに。

帰るときには、その大荷物を再び抱えて帰ることになったのです。

こうして、夫の入院生活に必要なものだけが病院に残されました。

そして私たちは、夫を病院に残して帰る準備をすることになりました。

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