また、兄はひとりで亡くなったわけではありませんでした。
兄は離婚したあと、お付き合いしている女性がいたようでした。
私たち家族は、誰ひとりその方の存在を知りませんでした。
兄が誰と付き合っていたのか。
どんな生活をしていたのか。
家族は何も知りませんでした。
今振り返ると、私たちは、悪く言えば疎遠な家族だったのだと思います。
そんな私たち家族が知らないところで、兄には大切な人がいました。
その女性は、兄の最期の瞬間までそばにいてくれたようでした。
それを知ったとき、私は言葉にできないほど申し訳ない気持ちになりました。
そして同時に、深い感謝の気持ちもありました。
家族が知らなかった兄のそばに、最後までいてくれた人がいた。
そのことは、今でもありがたく思っています。
私たち家族は、兄がなぜ死んでしまったのか、その答えを探していました。
どうして?
何があったの?
私たちが知らなかったことが、たくさんあったのではないか。
そんな思いがありました。
すると父が、
「その彼女に会ってみようと思う」
と言いました。
父だけではありません。
家族みんなが、同じ気持ちだったのだと思います。
兄のことを少しでも知りたかった。
兄が最後にどんな時間を過ごしていたのか知りたかった。
そして、兄がなぜ亡くなったのか、その理由を知りたかったのです。
警察と彼女本人の許可を得て、電話番号を教えてもらうことになりました。
私たちは、その方に連絡を取ることにしました。


コメント