先方と電話で連絡がついたようです。
葬儀場を見学している最中、廊下で先方と話し込んでいる父の背中を、私は今でもはっきりと覚えています。
私たちは翌日、お相手の方の近くにある喫茶店でお会いすることになりました。
その日の晩、私はどんな様子で、どんな気持ちで過ごしていたのでしょう。
眠れていたでしょうか。
今となっては、もう思い出せません。
そして、翌日を迎えました。
私は、人の名前と顔を覚えるのがひどく苦手です。
それなのに、その女性の顔は今でもはっきりと覚えています。
目がくりっとしていて、本当にかわいらしい方でした。
兄とは、兄が離婚した後、アプリを通じて知り合ったようでした。
アプリで知り合った人との間で、事件になるようなケースもあります。
そんな中で、兄がこの方と出会えたことは、幸運だったのだと思いました。
その方から、兄が話していたさまざまなことを聞きました。
兄はうつ病を患い、投薬治療を受けながら働いていたこと。
離婚によってひとりぼっちになり、ひどく傷ついていたこと。
実家との関係に悩み、苦しんでいたこと。
友達はいたけれど、本当の気持ちを話すことはできなかったこと。
そして彼女は、毎日お弁当を作り、住み込むような形で兄を支えてくれていたこと。
そこには、私の知らない兄がたくさんいました。
私は兄と、もう何年も疎遠になっていました。
もともと、お互いに自分のことを話し合うような関係でもありませんでした。
だから、兄が何を考えていたのか。
どんなことで苦しんでいたのか。
私は何も知りませんでした。
でも、どうして私は兄に連絡をとらなかったのだろう。
離婚して、苦しんでいたことを知っていたのに。


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