葬式が無事に終わり、私たちは兄の遺品の片づけに追われることになりました。
大人ひとりが暮らしていた部屋。
そこに残された荷物の量は、想像していた以上のものでした。
大量の荷物を前に、私たちは言葉を失いました。
もちろん、いわゆるごみ屋敷のような状態だったわけではありません。
ただ、普通に生活をしていただけでも、これほどたくさんのものが必要になるのか。
衣類や日用品、細々とした生活雑貨。
人がひとり暮らしていくということは、知らず知らずのうちに、こんなにも多くのものを抱えていくことなのだと気づかされました。
そこにあるものは、どれも兄が生活していた証でした。
そんな遺品整理の最中、母から不思議な話を聞きました。
兄のアパートにいた一羽のハト
兄のアパートに向かう途中のことです。
アパートには内階段がありました。
そこは、普通なら動物が入り込んでくるような場所ではありません。
ところが、その階段に一羽のハトがいたというのです。
しかも、そのハトは兄の部屋の入口あたりにいて、母たちの様子をじっと見ていたそうです。
母は思わず、そのハトに話しかけたといいます。
「○○かい? 家に入るからね」
○○というのは、兄の名前です。
まるで、そこに兄がいるかのように。
母は、そう声をかけずにはいられなかったのかもしれません。
しばらくすると、ハトはいなくなっていたそうです。
その話を聞いたとき、私は何とも不思議な気持ちになりました。
どうして、あんな場所にハトがいたのだろう。
なぜ、兄の部屋の入口あたりにいて、母たちの様子を見ていたのだろう。
偶然といえば、それまでのことです。
たまたま迷い込んできただけなのかもしれません。
でも、大切な人を亡くした直後というのは、普段なら気にも留めないような出来事が、特別な意味を持って感じられることがあります。
兄は自分の部屋を見に来たのだろうか
少しスピリチュアルな話になります。
亡くなった人は、動物の力を借りて、遺された人のもとへ会いに来ることがある。
そんな話を聞いたことがあります。
もちろん、それが本当なのかどうか、私には分かりません。
科学的に確かめられたことでもありません。
兄は、自分が暮らしていた部屋がこれからどうなっていくのか、見に来たのでしょうか。
自分がいなくなったあと、家族がどんな思いで荷物を片づけているのか。
母たちが部屋に入っていく様子を、そっと見守っていたのでしょうか。
そう考えると、あの一羽のハトが、ただの偶然だったとは思いたくなくなります。
自分の部屋を片づけていく私たちを見て、兄は何を思っていたのでしょうか。
そんなことを、今でも考えることがあります。


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