夫が入院したその日、家に着くと携帯電話に着信が残っていました。
公衆電話からでした。
とっさに、
「夫からだ!」
と思いました。
けれど、公衆電話には折り返し電話をすることができません。
このとき私は初めて、入院中の夫との電話は「一方通行」なのだということを認識しました。
重要な用件がある場合は、病院のナースステーションを通して連絡を取ることができるのかもしれません。
でも、そうでない限り、基本的には夫からの電話を私が待つしかありません。
精神を病んでいる夫。
もし夫が電話をかけたとき、私が気づかなかったら。
何度かけても電話がつながらなかったら。
公衆電話に折り返すこともできない。
「なぜ電話に出ないんだ」
そんな思いが、夫をさらに追い詰めることにならないだろうか。
電話がつながらないことが、夫にとって絶望につながらないだろうか。
そんな不安が頭をよぎりました。
その日から、携帯電話の着信を絶対に聞き逃さないように、振動設定をやめました。
着信音を大きくし、いつ夫から電話がかかってきても気づけるよう、常に携帯電話を持ち歩く。
夫からの電話を待つ生活が始まりました。


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